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世界で初めて作られた チョコレートコスモス 『ノエルルージュ』
このチョコレートコスモスは育種家・奥隆善さんが大学生だった、平成12年に世界で初めて在来種のチョコレートコスモスに黄花コスモスを掛け合わせてできた品種です。
従来のチョコレートコスモスと比べ丈夫さと美しさを兼ね備えた新しいタイプのチョコレートコスモスです。
この交配は今まで誰もやったことのない方法でした。→後述「泣ける話」
1. 育て方マニュアル
今回はこの育種家・奥隆善先生にノエルルージュの庭で育てる時の『コツ』を教えてもらいました。
会話形式で楽しく勉強しましょう。
私 | 『こんにちは、奥さん。今日はノエルルージュの庭で育てるときの注意点とコツを教えてください。』 |
奥 | 『まず一番大切なのは日当たりですね。コレがなければ始まりません。』 |
私 | 『何が始まらないのですか?』 |
奥 | 『いろいろです。ノエルルージュは光の量が不足すると植物が伸びてしまい、その上花も咲きにくくなってしまいます。』 |
私 | 『つまり、大きくなるだけなって、花が咲かないということですね。』 |
奥 | 『そうです。それと、切り戻しと剪定もうまく育てるには重要です。』 |
私 | 『もし、しなかったらどうなるんですか?』 |
奥 | 『もし何もせず放置すれば、周りの植物を飲み込み、花壇の一角を支配してしまいます。』 | |
私 | 『赤色だけに3倍強いのですね。』 | |
私 | 『それはそうとノエルルージュは短日性なのですか?長日性なのですか?』 | |
奥 | 『短日植物です。春から初夏にかけて購入された株は夏場に一休みをして、また9月秋分の日後のから咲き始めます。』 | |
私 | 『翌年も春から初夏にかけて株を購入した時のように花は見れるのですか?』 | |
奥 | 『翌年から冬を越した株は秋にしか咲きません。株が夏に大きく成長するので、その時に切り戻しをしてあげれば秋にコンパクトに花を咲かせます。』 |
私 | 『従来のチョコレートコスモスは暑さに弱いと聞いていますが、その辺このノエルルージュは育種にて改良されているんですか?』 |
奥 | 『はい、気合で改良させてもらいました。このノエルルージュは夏の暑さに非常に強いです。40度近くなる温室でも問題ありませんでした。むしろよかったです。 従来のチョコレートコスモスは長日性で暑さを嫌います。なので、涼しければ長日期間中である春から秋まで理論上咲き続けますが、実際のところ 一部の高冷地を除いては日本の暑さに耐えることができずに春に花を見れても、夏には休眠もしくは枯れて秋に花・u桙見れないですよね。 ノエルルージュはその点、暑さで花が休むのではなく、秋に咲く花なので夏は休むわけです。』 |
私 | 『もし、普通のチョコレートコスモスを仮にノエルルージュと同じように夏に切り戻しをして、秋にコンパクトに花を咲かせようとした場合問題はありますか?』 |
奥 | 『従来のチョコレートコスモスを夏に切り戻ししてしまえば、植物が枯れてしまうのでしないほうが良いかも知れません。』 |
私 | 『買ってくれるお客さんはそれぞれ用途を考えて買われると思うのですが、鉢植えと庭植えについてアドバイスをお願いします。』 |
奥 | 『鉢植えの場合、ノエルルージュは根の生育が旺盛です。なので根詰まりがしやすいので購入後は6号以上のできるだけ大きな鉢に植えてください。もし花壇などに植える場合は、日当たりの良い、栄養に富んだ場所に植えるのが良いでしょう。』 |
私 | 『購入された方がきっと関心があろうと思われる、《冬場の管理》について教えてもらえませんか?』 |
奥 | 『土を凍らせないのがポイントです。ノエルルージュは霜が降りると地上部が枯れてしまいます。 根を守るためには、落ち葉をかけたり、植えてあった場所に土を盛ることが大切です。』 |
私 | 『鉢植えのものは、室内に込んだり、軒下の下の当たらない場所や最終的には鉢を半分以上土に埋めて落ち葉や盛り土などしてあげるとよいですね?』 |
奥 | 『それと最後にお客様にとっての朗報です。』 |
私 | 『はい』 |
奥 | 『従来のチョコレートコスモスの大敵であったうどん粉病。ノエルルージュはうどん粉病にはほとんどかかりません。なので今までのものよりずっと楽にガーデンを楽しむことができます。』 |
私 | 『今回は矢祭園芸のホームページのためにありがとうございました。』 |
以上バーチャルテキスト対談でした。
※ノエルルージュの育て方パンフレットはこちら→
2. ノエルルージュを生産している人
今回この今までチョコレートコスモスの難点を克服したノエルルージュは現在矢祭園芸をはじめとした
計4件の生産者(しかも若い)によって作られています。
1、グリーンハウスシラキ
岐阜県岐阜市で脱サラで生産がんばってます。もともとご両親が生産者でしたが・・。
コリウスやシュウメイキクなどなど作っています。
次回は金澤美浩育成のシュウメイギク『福娘シリーズ』を作る予定です。
詳しい情報は→http://www12.ocn.ne.jp/~shiraki/
2、Tommy Fower
全国でも珍しい夫婦3世代農場を持つ生産者。場所は神奈川県秦野市にあります。
さわやか青年です。チョコレートコスモス『ノエルルージュ』の他にハイビスカス、 シクラメン、野菜の苗などを作っています。
3、余目園芸
山形県余目町の生産者。米と花を作ってます。独特の話し言葉『庄内弁』を使って、前回のサンシャインシティでの『クレマチスと春の花展』では非常に好印象をお客さん
が持ってくれたそうです。
3. 泣ける話
コレは余談なのですが、ノエルルージュを品種登録する際には長く険しい育種家しかわからない裏話があったようです。
最終的にはN林水産省が絡むのですが。
奥様は大学生時代にチョコレートコスモスの研究をはじめました。その研究の中で暑さに強い『黄花コスモス』と暑さに弱い『チョコレートコスモス』が近縁種ということを発見し、あるやり方で世界で初めて雑種を作りました。
その時なんともいえない赤みのかかったチョコレート色とその強健さに感動したそうです。
その後『あるやり方』を研究室と非常に縁の深いある会社に公開しました。その『ある会社』は奥様の作った商品には目もくれず、自社でその技術を使い、後追いで品種を育種し、品種登録を申請しました。
〜ここまでは普通によくある話〜
実はこのとき既に奥様は先に開発した技術を持って、商品を作り、品種登録申請を『ある会社』より早く済ましていました。
この時N林水産省は奥様に『チョコレートコスモスの様式は無いのでコスモスの様式で出願せよ』と指示。しかし、チョコレートコスモスでは後追い的な『ある会社』は『キバナコスモス』の様式で出願。『キバナコスモス』の様式で出願されたものが『コスモス』で出願されたものより早く手続きが終了したがために、遺伝子の組み合わせ的にほぼ同じなものが、『キバナコスモス』で出願したものが先に本登録され、先に世界初の技術をもって育種をし、申請をしたものが2番手のようにあるのがショックのようです。
しかも、その後のN林水産省は同じグループに入る植物と気づいていたのですが、事前説明もなく、番号の変更もなかったのこと。現在のN水の見解も同じ植物で、単純にノエルルージュが後で登録されたということが公表されてます。今N水にいい訳文を請求しているのですが、請求から1年たち、やっとこれから作成するのだとか・・・。
奥様は日本ではほとんどいない絶滅危惧種のような花の育種をメインとしてしている人であり植物研究家でもあるので、この国の対応についてはがっかりしてしまったようです。
4. 個人育種について
個人育種というのはその文字の通り『個人で育種をする』ということです。個人育種は企業育種と違い資金的なバックアップもなく行います。また、植物の場合理論上は問題なかったとしても、なかなかその通りにならないことが多く新しい品種が完成するのには、運がよければ3年かかり、矢祭園芸の秋明菊のように10年以上かかるものもあります。また、その後、いくら良い商品を生み出しても世の中に一般的に販売するのには生産者探し、販売ルート、プロモーションといろいろ苦難の道は続きます。種苗会社にお願いするのも良いのですがなかなか育種家の希望が通らなかったり、たくさんある商品に埋もれてしまい、良い商品でも良さを知ってもらう前になくなってしまうケースが少なくありません。そう言った意味でも多くの人があこがれる個人育種家の立たされている立場というのは、現実的には厳しいです。
今回ノエルルージュは金澤美浩に師事した人たちで、日本の個人育種家の立場を理解し、今後未来の個人育種家を取り囲む環境を改・u梠Pしようと賛同してくれた若い生産者です。若い育種家と若い生産者によって、これからの産業構造を変えていってほしいとオランダから願っています。(他人事ではないのですが・・・。)
ノエルルージュの問合せ先
TAIKI@YSFLOWER.JP
金澤大樹まで
*ノエルルージュ以外のお問い合わせにはお答えできませんのであしからず
今月の花 バックナンバー
2007年7月 アンゲロニア
2007年8月 スクテラリア
2007年9月 シュウメイギク
2007年11月 八重咲きシクラメン チモ
2007年12月 シクラメン
2008年1月 プリムラ(メラコイデス)
2008年2月 プリムラ(ポリアンサ)
2008年3月 クレマチス
2008年4月 カーネーション